扉の開く音がしたのは、その直後だった。

 「あ、いたいた。やっぱりここだったんですね」

  能天気な声と同時に、真紀の顔が覗いた。

  相変わらず、全身から雨の匂いを漂わせている。

  張り詰めた緊張の糸が切れ、どっと全身から力が抜ける。

  酸欠を起こしたのか、どこか視界が不安定だ。

  思わず、膝から崩れて座り込んでしまう。

 「先輩? 気分が悪そうですけど、大丈夫ですか?」

  慌てた足取りで、長身が近づいてくる。

  図書室が苦手らしい真紀は、相変わらず居心地が悪そうだ。

  長い足を折り畳んで、僕の隣に腰を落ち着ける。

  並んで座る格好になった。傍から見たら滑稽な光景だろう。

 「お前、よくここだってわかったな」

 「そりゃあ、わかりますよ。

  先輩がいる場所って言ったら、屋上か図書室しかないじゃないですか」

  当然のように真紀が断言する。

  行動を見透かされているようで癪に障った。

  憮然として黙ると、笑いを堪えるような表情が返ってくる。

 「読書中にお邪魔しますけど、外で休憩しませんか?

  ここ空気悪いですし、本当に顔色が悪いですよ」

 「そうだな。けれど何処に――――」



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