突然、ぞくっとした寒気を覚えて立ち竦む。

  背後から足音がしたのは、その直後だった。

 「――――失礼」

  揺ぎない威厳の滲んだ、男性の声。

  振り返ると、トレンチコート姿の兎が立っていた。

  今朝、目にしたのと同じ、有能そのものな刑事の風貌。

  なぜ、また僕の前に現れたのだろう?

  半ば無意識に後ずさる―――その直後だった。

  素早い動作で、鼻先に警察手帳を突きつけられた。

 「少しお話をうかがいたいのですが………なに、お時間はとらせません」

  言うや否や、颯爽とした足取りで僕と肩を並べた。

  警察手帳を見せられては、無下に追い払う事もできない。

  必死に内心の動揺を隠して、再び僕は歩き出した。

  高校は楽しいですか? お一人で暮らして淋しくないですか?

  時折、当たり障りのない質問が投げかけられる。

  頑として無視を貫いても、気にした素振りはなかった。

  そんな人を喰った態度が、さらに不安を煽り立てた。

  次第に、限界に近づいているのがわかる。

  いい加減にしろ、と口を開きかけた、次の瞬間―――。



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