まるで蛙の解剖死体だった。

 袋小路の奥で、制服姿の少女が倒れていた。

 空気に質量を感じるほど、おびただしい血の臭気。

 黒ずんだ血の池の中心で、剥き出しの臓器が雨に濡れている。

 致命傷になった傷は、首筋と腹部の二箇所にあった。

 薄茶色の髪が絡みつく首筋には、黒々と落ち窪んだ傷口。

 大量の血液に濡れた腹部のブラウスには、三日月の裂け目。

 両足の間に溢れ出た腸は、まるで蠕動する軟体動物のようだ。

 見覚えのある顔立ちだった。

 切り裂きジャックの最初の犠牲者だ。

 そう認識した途端、頭の中で混乱が生まれる。

 なぜ四ヶ月前に見つかった死体が、今ここにあるのだろう。

 無意識の動作で、背後の歩道を振り返った。

 数人の通行人が、僕に気がついて足を止める。

 どの顔も、訝しそうな表情を浮かべていた。

 まるで何もない路地裏に佇む僕を怪しむように。

 もう一度、目の前の死体を見下ろした。

 妄想や錯覚ではない、確かな存在感。

 真紀の言葉を信じるなら、この女性は僕に似ているのだろう。

 けれど、むしろ僕に似ているというよりは―――。



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